《原爆症認定集団訴訟@被爆64年》 の最新情報

広島・長崎に原爆が投下されて60年+α。今、被爆者に癌などさまざまな病気が発症しています。被爆者が「原爆症認定」を求めておこした原爆症認定集団訴訟について、弁護団から最新情報を提供します。

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近畿原爆症認定訴訟判決の意義

「今、被告らに残されたとるべき途は明白です。」

5月17日、原爆症認定集団訴訟(東京)の口頭弁論で、近畿弁護団の尾藤廣喜弁護士が行った意見陳述の内容を掲載します。
       2006年(平成18年)5月17日

    近畿原爆症認定訴訟判決の意義

原告訴訟代理人
            弁護士  尾  藤  廣  喜

1 私は、本件訴訟の原告代理人であるとともに、近畿原爆症認定訴訟、さらには、京都原爆小西訴訟及び長崎原爆松谷訴訟の原告代理人として、訴訟を担当してきましたが,この5月12日に判決が下された近畿原爆症認定訴訟の判決内容とその持つ意義を申し上げ、本件訴訟の現段階において、被告らが採るべき途について、意見を申し上げます。
2 大阪地方裁判所第2民事部(西川知一郎裁判長係)は、大阪府、京都府、兵庫県内に居住する被爆者が原告となり厚生労働大臣(一部は厚生大臣、以下同じ。)の原爆症認定申請却下処分の取消しと国に対する損害賠償請求を求めた近畿原爆症認定訴訟について、本年5月12日、第1陣の9名の原告全員について、原爆症認定申請却下処分の取消しを認める画期的な判決を下しました。
  この判決は、これまで被告厚生労働大臣が行ってきた被爆者切り捨て政策ともいうべき誤った認定基準の機械的適用を事実に基づき批判し、被爆者の被爆の実態を十分に見すえたうえで、被爆の実相に沿った認定の在り方を示した明快な判決となっております。即ち、
まず第1に、この判決は、本件でも問題となっておりますDS86及びDS02について、あくまでもシミュレーションにしかすぎず、しかも、計算値と実測値の不一致があり、「少なくとも爆心地から1300メートル以遠ではDS86及びDS02の計算値は過小評価となっているとの疑いがある」と述べ、さらに、爆心地から2キロメートル以遠においても、被爆者の一定程度に急性症状が見られることについて、これらの手法では説明がつかないとし、「少なくとも爆心地から1300メートルないし1500メートル以遠では、DS86及びDS02に依拠した機械的適用は、慎重になすべきである。」と判断しています。
また、第2に、この判決は、DS86及びDS02について、残留放射線による被曝及び放射性降下物による被曝が、広島において己斐、高須地区、長崎において西山地区について限定されるべき実態はないとし、さらに入市被爆者にも脱毛等放射線による急性症状としか考えられない症状が生じている厳然たる事実をあげ、また、内部被曝についても、具体的な事実、文献の根拠をあげながら、これを無視することができないとして、被告厚生労働大臣が現在とっている審査の方針について、「機械的に適用し、審査の方針の定める特定の地域における滞在又は長期間にわたる居住の事実が認められない場合に直ちに被曝の事実がないととすることには、少なくとも慎重であるべきである」とも判断しています。
そして、第3に、いわゆる原因確率の適用については、当該個人に発生した当該疾病が原爆放射線被曝により招来された関係を是認し得る高度の蓋然性の有無を判断するための単なる1つの考慮要素として位置付けられるべきものであり、原因確率が大きければ有力な間接事実としてしんしゃくすることができるとしても,原因確率が小さいからといって直ちに経験則上高度の蓋然性が否定されるものではないとしています。
このように、この判決は、被告厚生労働大臣が現在とっている審査の方針を機械的に適用する手法の数々の問題点を明確に指摘し、その根本的転換の必要を求めているのです。
さらに、この判決は、第4に、最終的に、放射線起因性の要件の判断にあたっては、「放射線被曝による人体への影響に関する統計的、疫学的及び医学的知見を踏まえつつ、当該申請者の被爆者の被爆前の生活状況、健康状態、被爆状況、被爆後の行動経過、活動状況、生活環境、被爆直後に生じた症状の有無、内容、程度、態様、被爆後の生活状況、健康状態、当該疾病の発症経過、当該疾病の病態度、当該疾病以外に当該申請者に発生した疾病の有無、内容、病態などを全体的、総合的に考慮して、原爆放射線被曝の事実が当該疾病に係る疾病の発生を招来し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断すべきである。」としています。この考え方は、線量推定方式というシミュレーションの方式によるのではなく、被爆者の具体的な状況という事実を何よりも重視すべきであるとする長崎原爆松谷訴訟の最高裁判決,小西訴訟大阪高裁判決及び東訴訟東京高裁判決の判断と成果をさらに深めたものであります。
そして、この判決は、第5に、上記の判断の下に、9名の原告全員について放射線起因性を認め、中でも2名の入市被爆者及び爆心地から3.3キロメートルの地点で遠距離被爆者について、残留放射線による被爆、内部被爆による影響を認めており、これは、当然のこととはいえ、いずれも画期的な判断であります。
3 とはいえ、この判決で示された放射線起因性の判断の考え方は、これまで の長崎原爆松谷訴訟最高裁判決、京都原爆小西訴訟大阪高裁判決及び東原爆 訴訟高裁判決で示された考え方、即ち、起因性の判断について、線量推定方 式に基づく機械的判断という厚生労働大臣のとる方式を排斥し、被爆者の被 爆実態を総合的に判断すべきであるという考え方に基づくものであり、厚生 労働大臣は、長崎原爆松谷訴訟で3回、京都原爆小西訴訟で2回、東原爆訴 訟判決で2回、そして今回の近畿原爆症認定訴訟で1回の合計8回連続して 敗訴したことになります。
  京都原爆小西訴訟は、もともと、京都市内に住んでいた小西建男さんが、 1986年10月11日、今から約20年前、たった1人で、しかも本人訴 訟で起こした事件でした。そして、厚生大臣の上告断念によって勝訴判決が 確定したのが2000年11月22日でしたから、小西さんの勝訴まで実に 14年を要したことになります。
  しかし、小西さんは、せっかくの厚生大臣の認定の後、約2年4ヶ月しか 生きることが許されず、2003年4月15日に亡くなられました。享年7 6歳でした。
  小西さんが、たった1人で、しかも本人訴訟で裁判を提起した理由は、「例 え、ごまめの歯ぎしりであっても、自分の苦しみが原爆の放射能による可能 性は否定できるとたった一行で却下されたことについて、国に一矢報いなけ れば死んでも死にきれん。」「他の被爆者のためにも、認定のあり方を変え なければ。」との思いにありました。
東京地方裁判所に提訴された東数男さんも、東京高裁の判決を見ることな くなくなられています。
  今、自分が苦しんでいる症状が原爆放射線によるものであることを認めさ せたい、また、原爆症認定制度の根本的改革を求めたいという小西さん,東 さんの思いを受け継ぎ、全国で13地裁170名の原告が、集団訴訟を提起 して闘っていますが、今回の判決は、その第一番目の判決ではありますが、 長崎原爆松谷訴訟から数えれば8回目の判決になります。
4 私は、松谷さんの最高裁判決の直後、小西さんの大阪高裁勝訴判決の直後、 いずれも厚生省交渉に臨み、担当事務局に、原爆症の認定のあり方を根本的 に改めるように求めました。
  その際、担当事務局は、審議会の委員に原爆症認定のあり方の検討をお願 いしているとのことでした。ところが、その結果として、何らの反省もなく 出されてきた新しい認定基準が「原因確率論」に基づく「審査の方針」だっ たのです。これによって、原爆症認定率は、長崎原爆松谷訴訟の最高裁判決 及び京都原爆小西訴訟の大阪高裁判決の後、判決の判断とは逆に、益々厳し くなっております。
また、東さんの判決にもかかわらず、厚生労働省は,C型肝炎に関する認 定基準を変えようとはしておりません。
  いったい、厚生労働省は、何回敗訴すれば、自らの過ちを認めるのでしょ うか。また、何時になったら、正しい認定行政を行うのでしょうか。
5 全国13地裁に提訴している170名の原告のうち、既に26名の原告が 亡くなっています。小西さん、東さんの例を持ち出すまでもなく、被爆者に 残された時間は、わずかしかありません。
  にもかかわらず、敗訴し続け、自分たちが行っている認定行政が取り消さ れ続けても,控訴、上告を続け、判決確定後もなお誤った行政を改めること もしないことに恥すらも感じず、被爆者を苦しめ続けている国、行政とはい ったい何なのでしょうか。
  今、被告らに残されたとるべき途は明白です。
  まず、近畿原爆症認定訴訟の地裁判決に従い、控訴することなくこれを確 定させることです。そして、当裁判所をはじめ,大阪以外の全国12地裁に おける裁判で、原告らの請求を認諾することです。
  そのうえで、厚生労働大臣は、近畿原爆症認定訴訟の地裁判決に基づき、 原爆症認定のあり方を抜本的に改革することです。
  それこそが、国民から付託された国民の生命と健康を守るという厚生労働 大臣の責務の応える途であることを強調して、私の意見陳述を終えます。
以上
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