《原爆症認定集団訴訟@被爆64年》 の最新情報

広島・長崎に原爆が投下されて60年+α。今、被爆者に癌などさまざまな病気が発症しています。被爆者が「原爆症認定」を求めておこした原爆症認定集団訴訟について、弁護団から最新情報を提供します。

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東京地裁判決113頁の記載とは(残留放射線は無視できない)

犬塚議員が厚労省の役人に朗読をさせた「東京地裁判決113頁」を紹介します。

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残留放射能についての問題点(内部被曝を含む。)

a 広島原爆,長崎原爆とも,原爆投下直後から残留放射能についての調査がなされたものの,誘導放射能及び放射性降下物について,十分な実測値が得られておらず,ある程度本格的な調査がなされたのは昭和20年9月17日の台風の後である・・・・

 DS86報告書自体,主たる内容は初期放射線による外部被曝線量の推定であって,残留放射能については1章を割くにとどまっており,しかも,その内容も,風雨の影響がある以前に速やかには測定されず,風雨の影響や放射能の時間分布を明らかにするのに十分なほどは繰り返されなかったこと,測定場所が少なく放射能の地理的分布を十分推定できなかったこと,標本の偏りの有無も不明であることなどを明記した上での検討となっている。
b 特に,放射性降下物については,気象学的情報に基づくモデル化が困難であることから,限られた核種についての現存する測定値から,風雨の影響に対する補正をせずに推定しているのであって,その計算値の正確性には自ずと限界があるものというべきであるから,これをもって放射性降下物による被曝線量の上限を画したものであるとはいうことには疑問がある(なお,黒い雨専門家会議報告書資料編では,広島における放射性降下物による外部被曝線量の推計がなされているが,このようなシミュレーションはDS86においても断念された手法であって,その内容をみても,計算の各段階で,具体的な根拠の明らかでない仮定や補正がなされており,そのまま採用することはできない。)。
 そして,DS86及びこれに基づく審査の方針は,放射性降下物による影響が現実的に認められるのは,広島の己斐・高須地区,長崎の西山地区のみとするのであるが,これらの地区で放射性降下物による線量が高い傾向は窺えるにせよ,それ以外の地区でゼロであるとはいえない。
 むしろ,放射性降下物の生成過程,すなわち,原爆炸裂後,爆弾内部の核分裂生成物,未分裂の核分裂性物質,誘導放射化された原爆の器材物質がキノコ雲を構成しており,キノコ雲の周辺部では下降気流が支配的であることからすると,論理的には,広島の己斐・高須地区,長崎の西山地区以外の周辺部にも,放射性物質が降下した可能性があるといえる。このことは,昭和20年8月11日の大阪調査団の初期調査で,宇品(甲8の1によれば,爆心地の南南東3ないし5キロメートル)で八丁堀(爆心地の東0.5ないし1キロメートル)と同程度の放射線が観測されている一方,己斐地区内でも自然放射線以上の放射線が測定されなかった箇所もあること(甲78資料14),同月9日ころに仁科らが爆心から5キロメートル以内で採取した試料22個について,静間らがセシウム137の放射能の精密測定を行ったところ,爆心から1~1.2キロメートルより外側で放射能が検出され,サンプル11(爆心地の北方3600メートル),同25(爆心地の東方3000メートル)などでも放射能が検出されたこと(甲169)からも窺え,場所による濃淡はあるものの,広島の己斐・高須地区,長崎の西山地区以外にも,周辺部の広い地域に放射性物質が降下した可能性があると考えるのが合理的である。
 以上のとおり,放射性降下物の影響が認められる地区は,広島の己斐・高須地区,長崎の西山地区に限定されるとすることに十分な根拠があるといえるかどうかには疑問があるものというべきであるが,それに加え,これらの地区における放射性降下物による被曝線量の算定についても,疑問の余地があるものというべきである。すなわち,被告らは,爆発1時間後から無限時間までの地上1メートルの位置での放射性降下物によるガンマ線の積算線量は,広島の己斐・高須地区で0.006ないし0.02グレイ,長崎の西山地区で0.12ないし0.24グレイであったと主張するが,その根拠となっているDS86報告書の計算値は,昭和20年9月17日ころの台風の影響を考慮してないことを始めとして,様々な留保が付された上での数値にすぎないことを軽視したものと評さざるを得ない。具体的には,DS86報告書(乙16)によれば,長崎の西山地区における放射性降下物の直接測定は,最も早いTyboutの調査で昭和20年9月21日であるし,セシウム137の土壌分析に用いられた試料は原爆投下から10年以上後に採取されたものである。広島における直接測定は,最も早い藤原と竹山の調査でも,昭和20年9月24日と推定されている。これらはいずれも原爆投下直後の放射性降下物の量を推定する根拠としては十分なものといえるかどうかは疑問といわざるを得ないのである。
c また,誘導放射能についても,初期放射線の線量から推定計算がなされているものの,半減期の短い核種を対象とする早期の直接測定はなされておらず,早期の入市者の被曝線量が推定値より大きかった可能性がないわけではない。
 人体の誘導放射能についても,限定された測定方法及び試料によるものではあるが,島本光顕らの生体誘導放射能の調査によれば,特に被爆間もない時期には強い放射能を帯びていた可能性があり,これと異なる報告も見出しがたいから,残留放射能による被曝の原因として無視してよいかどうかには疑問が残る。
d さらに,内部被曝について,ガンマ線及び中性子線以外にアルファ線及びベータ線が影響すること,外部被曝と比べ至近距離からの被曝となり人体への影響が大きいことを理論的に否定し去ることはできない。
 また,残留放射能による内部被曝について,長崎大学の岡島らの測定結果があるが,これは原爆から20年以上経過した昭和44年において,セシウム137を測定したにすぎず,半減期の短い核種を含めた原爆投下時からの被曝線量の上限を示したものとは考え難い。
 被告らは,内部被曝を評価する上で着目すべき放射性核種はセシウム137とストロンチウム90であると主張するが,内部被曝に関する意見書(乙94)によれば,核分裂生成物のうち「昭和40年の時点ではストロンチウム90とセシウム137以外のほとんどの核種は減衰しており,長期間の内部被曝を評価する上で着目すべき放射性核種はこれらストロンチウム90とセシウムと考えられる」とされており,被爆直後からの内部被曝全体の評価にあたって,ストロンチウム90とセシウム137以外の核種を無視できる根拠は見出しがたい。また,誘導放射化により生ずる核種の半減期はより短いが,同様に直ちに無視してよいものとはいえない。
 被告らは,体内に取り込まれた放射性核種が代謝過程を経て排出され,かかる生物学的半減期を考慮すれば,体内の放射能が半減する有効半減期はより短いとも主張とするが,新たに体外から取り込まれるものも考慮すれば,生物学的半減期をそのまま評価してよいとはいえない。
 また,広島原爆においてアルファ線の原因となる未分裂のウラン235は具体的に計測されておらず,被告らは気化したウラン235は大気中に拡散し希釈されて流れ去ったと主張するが,核分裂生成物が降下していることから考え,ウラン235のみ流れ去ったと解する理由は見出しがたい。原爆投下直後の限られた調査方法やその後の台風による流出を考えれば,未分裂のウラン235が検出されていないことから直ちに,ウラン235が降下しなかったとはいえない。
 他方,長崎原爆について,被告らは未分裂のプルトニウムの存在は否定しないが,極微量で健康影響を考えるには至らないことが証明されていると主張するが,その根拠とすることは,プルトニウムの農作物への移行因子がセシウムの100分の1ないし200分の1とされていることであり,摂水,経鼻,経皮等,食物以外からの摂取方法を考慮したものではなく,被告らの上記主張もまたにわかに採用しがたい。
e したがって,DS86報告書における推定値は,残留放射線による外部被曝の評価に用いるとしても,不十分であり,内部被曝も含めた残留放射線の影響全体の上限を画するものであるとはいえない。
・ 小括
 以上の検討結果をまとめると,次のとおりである。
 まず,DS86による線量評価には,相応の合理性が認められるものというべきであるから,被爆者の被曝線量を推定するのに当たり,これが参考資料の1つとなることは否定し難い。
 しかしながら,その評価結果に限界があることも既に指摘したとおりであって,改めて整理すれば,①初期放射線量の評価については,遠距離において過小評価になっている可能性を否定し去ることはできないし,②放射性降下物については,DS86による推定以上にその影響が及んでいる可能性があり,③誘導放射能についても,DS86の推定以上の影響が及んでいた可能性を否定できない上,人体の誘導放射能等,DS86において考慮の対象となっていない態様による被曝の可能性も否定し去ることができず,④内部被曝についても,これを考慮する必要がないものと断定してしまえるだけの根拠があるかどうかは疑問であるといわざるを得ない。
 このように考えていくと,広島,長崎の被爆者に,DS86による計算値を超える被曝が生じている可能性がないと断定してしまうことはできないのであって,DS86による線量評価の合理性は,被爆者に生じた急性症状等を合理的に説明することができるかどうかという観点からも検証する必要があるものというべきである。別の言い方をすれば,客観的な資料に基づく合理的な判断として,放射線による急性症状等が生じていると認められる事例が存在するのであれば,その事実を直視すべきなのであって,それがDS86による線量評価の結果と矛盾するからといって,DS86の評価こそが正しいと断定することはできないものというべきである。
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