《原爆症認定集団訴訟@被爆64年》 の最新情報

広島・長崎に原爆が投下されて60年+α。今、被爆者に癌などさまざまな病気が発症しています。被爆者が「原爆症認定」を求めておこした原爆症認定集団訴訟について、弁護団から最新情報を提供します。

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Q&A] 高度の蓋然性って?

(Q)厚労省は,よく,「最高裁判所が,放射線起因性について高度の蓋然性が必要であるという考え方を示しているので,原爆症認定の判断は,放射線学,疫学,臨床医学等の高度に専門的な知見に基づいて,厳格に判断されなくてならない」という説明します。「だから認定されている被爆者が2200人でも仕方ないのだ」と言いたいようです。
でもそれって本当でしょうか?

(A)この考え方は,最高裁判決の真に意図するところをねじ曲げるものです。

 (1) 最高裁判決を曲解する厚労省
    最高裁判所・松谷判決は,「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果の発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判定は通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」と判示しています。
    厚労省は,上記判決の直線の下線の部分のみを,前後の文脈と切り離して引用していますが,それは判決の真の意味での解釈を誤ったものです。
    このような因果関係における「高度の蓋然性」の判断を最初に示したわゆるルンバール訴訟判決(最高裁昭和50年10月24日第2小法廷判決)の判例解説では、「経験則が最もめざましい作用を示すのは間接事実から主要事実を推認する場合であり、たとえ一つ一つの間接事実は主要事実との結び付きが軽微であっても、多角的な数個の間接事実が相互に関連することによりその蓋然性が飛躍的に強まるのである。」として、上記最高裁判決について「具体的な数個の間接事実を前提として経験則により事実上の推定をはたらかせ、因果関係を肯定している。」と指摘しています。
    原爆症の起因性の判断にあたっても、上記の考え方は当然該当し、自然科学的な厳格な証明が求められるものではなく、当該申請者の被爆直後の急性症状や被爆後の体調の変化などの間接事実を前提として、経験則により事実上の推定をはたらかせて、起因性を判断すべきもの,というのが最高裁裁判所の判示する「高度の蓋然性」が真に意味するところなのです。
 (2) 松谷最高裁判決と高度の蓋然性
    この点を長崎原爆松谷訴訟(以下「松谷訴訟」という)最高裁判決に則して具体的に述べると以下のとおりとなります。松谷訴訟における原告松谷英子は、爆心地から2.45キロメートルの距離・地点で被爆しました。したがいまして、厚労省の論理やDS86によれば、松谷英子は、ほとんど放射線被曝をしておらず、その申請症状について放射線起因性が認められることはありません。ところが、最高裁は、以下のとおり述べて、原告松谷英子の申請疾病について放射線起因性を認めた原審の判断を是認しました。
   「DS86もなお未解明な部分を含む推定値であり、現在も見直しが続けられていることも原審の適法に確定するところであり、DS86としきい値理論とを機械的に適用することによっては(厚生省調査も含むこれまでの調査に明確に示されている,遠距離被爆者の脱毛-作成者引用)の事実を必ずしも十分に説明することができないものと思われる。例えば、放射線による急性症状の一つの典型である脱毛について、DS86としきい値理論を機械的に適用する限りでは発生するはずのない地域で発生した脱毛の大半を栄養状態又は心因的なもの等放射線以外の原因によるものと断ずることには、ちゅうちょを覚えざるを得ない。」
    最高裁は、上記の判断に続けて、「このことを考慮しつつ,松谷英子の被爆状況、その後の健康状態及び長崎の遠距離被爆者の実態,なかんずく物理的打撃のみでは説明しきれないほどの松谷英子の脳損傷の拡大の事実や松谷英子に生じた脱毛の事実などを基に考えると,松谷英子の脳損傷は,直接的には原子爆弾の爆風によって飛来したかわらの打撃により生じたものではあるが,原子爆弾の放射線を相当程度浴びたために重篤化し,又は右放射線により治ゆ能力が低下したために重症化した結果,現に医療を要する状態にある,すなわち放射線起因性があるとの認定を導くことも可能であって,それが経験則上許されないとまで断ずることはできない。」と判示しました。
   このように、最高裁が、松谷さんの被爆後脱毛等の急性症状や被爆後の体調変化等を重視して放射線影響を認定していることは明らかです。
 (3) 松谷最高裁判決を継承する大阪,広島,名古屋判決
    上記の点は,大阪判決,広島判決そして名古屋判決でも再確認されています。例えば,大阪判決では、松谷訴訟最高裁判決がいう考慮すべき間接事実について以下のごとく判示しています。
   「原爆症認定申請に対し、放射線起因性の要件を判断するに当たっては、原爆放射線の被曝には種々の態様があることなどからして、その推定は現存する最も合理的で優れた線量評価システムをもってしてもなお未解明で不十分なところがあることに加えて、放射線の人体に与える影響については、その詳細が科学的に解明されているとはいい難い状況にあり、放射線による後障害は、高い統計的解析の上にその存在が明らかにされてくるという特徴があることなどにかんがみ、放射線被曝による人体への影響に関する統計的、疫学的及び医学的知見を踏まえつつ、当該申請者の被爆前の生活状況、健康状態、被爆状況、被爆後の行動経過、活動内容、生活環境、被爆直後に発生した症状の有無、内容、態様、程度、被爆後の生活状況、健康状態、当該疾病の発症経過、当該疾病の病態、当該疾病以外に当該申請者に発生した疾病の有無、内容、病態などを全体的、総合的に考慮して、原爆放射線被曝の事実が当該申請に係る疾病の発生を招来した関係を是認し得る高度の蓋然性が認められるか否かを経験則に照らして判断すべきであり、審査の方針の定める原爆放射線の被曝線量並びに原因確率及びしきい値は、放射線起因性を検討するに際しての考慮要素の一つとして、他の考慮要素との相関関係においてこれを評価ししんしゃくすべきであって、審査の方針自体において定めるとおり、これらを機械的に適用して当該申請者の放射線起と指摘しているのです。
 (4) 厚労省の主張する科学性のまやかし
   科学的知見に関して,後ろに添付した中国新聞(06.8.6付け)は,「被爆影響,解明道半ば」というタイトルを掲げ,放影研の大久保利晃理事長のインタビュー記事を掲載していますが,その中で理事長は,「「長い期間を経過して現れる晩発性影響で分かっているのは,まだ5%程度かも知れない」「最終的に答えが出るのは,いま約4割の人が生存されている対象集団の追跡調査がすべて終了する時点であろう。」と被爆影響の未解明性を強調しています。
このような状況のなかで,被爆者に高度の科学的立証を要求することは,被爆者に不可能を強制することとなり,明らかに「高齢化の進行している被爆者に対する保険,医療及び福祉にわたる総合的な援護対策を講ずる」と前文で明記した,現行の被爆者援護法の立法趣旨に合致しないこととなるのです。
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