《原爆症認定集団訴訟@被爆64年》 の最新情報

広島・長崎に原爆が投下されて60年+α。今、被爆者に癌などさまざまな病気が発症しています。被爆者が「原爆症認定」を求めておこした原爆症認定集団訴訟について、弁護団から最新情報を提供します。

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Q&A  東京三次訴訟判決のポイント

      判決日:2011年7月5日
原爆症認定集団東京訴訟(3次) 東京地裁判決のポイント

原爆症認定集団訴訟東京弁護団事務局長 中川 重徳

Q1. 今回の判決の意義

厚労省が認定を拒んでいた未認定原告16名中12名について、国の却下処分が違法と判断され取り消された。現在の認定審査の在り方が、裁判所による被爆者援護法の解釈と乖離し、司法により容認されないものであることがはっきりした。

Q2. どのような原告が勝訴(国の処分の取消)したのか

勝訴した12名の申請疾病は下記のとおり(1名は二疾病で申請)。

脳梗塞 5名
心筋梗塞・狭心症 4名
ガン 1名
胸部大動脈瘤 1名
肝機能障害 1名
甲状腺機能亢進症 1名

Q3. 現行の認定行政との対比で注目される点

1 疾病論
(1)心筋梗塞、肝機能障害
これらの疾病は積極認定対象疾病であるにもかかわらず、現在の審査では近距離(1km台)しか認められず、入市被爆者については全件却下しているものと思われる。判決は、以下のとおり、2km以遠、入市者を含めて認めた。
心筋梗塞・狭心症 2.4km、2.0km、2.0km、1.5km
肝機能障害 2日後入市
(2)脳梗塞、胸部大動脈瘤
現在の実務では、脳梗塞は全件が却下されているものと思われるが、判決は、以下のとおり、3km台や入市被爆者を含めて広く認め、胸部大動脈瘤についても放射線起因性を認めた。
脳梗塞 2.4km、1.5km、3日後入市、3.5km、2.5km
胸部大動脈瘤 1名(2.3km)
(3)甲状腺機能亢進症についても、改めて放射線起因性を肯定し、4km被爆の原告が認容された。

2 放射線の放射の実態等
残留放射線による多様・複合的な被ばくの可能性・危険性について、十分留意すべきことが指摘され、判決は、各原告の起因性の判断にあたって、距離や入市時期だけに偏ることなく、多面的・複合的に被ばくの可能性を詳細に検討している。

3 事実認定
入市時期等の事実認定について、原告(被爆者)の述べるところを尊重して判断している(手帳上8/18入市とされている者について8/10入市と認定)。

Q4.なぜ裁判所は厚労省と異なる判断を下すのか。
(1)正しい起因性判断のあり方
被爆者援護法上の「放射線起因性」については、「高度の蓋然性」を意味することに争いは無い。問題は、その内実である。
しかし、第1に、「高度の蓋然性」は、「一点の疑義も許されない自然科学的証明ではない」。さらに、判決は、同じ「高度の蓋然性」と言っても、要求される証明の程度は、証明の対象とされることがらや関係する知見の「内容、性格等に応じて判断されるべき」とする(280頁。要旨4頁以下)。
(2)考慮すべき「内容、性格等」
①援護法の趣旨・目的 「国家補償的配慮をも制度の根底にすえて、被爆者の置かれている特別の健康状態に着目してこれを救済するという人道目的の下に制定された」
⇒この目的及び趣旨を損なうことのないように起因性の判断を行わなければならない。
②制定の時点で放射性の影響と加齢が競合して健康状態が悪化していることが前提となっていること(要旨4頁)
⇒単に申請疾病が「加齢により広く発症する疾病である」というだけで放射線起因性を否定してはいけない。
③原爆放射線の人体影響に関する知見の「内容、性格等の特殊性」(要旨4~7頁)として、
・原爆は、「日常の生活環境・市街地」に投下された唯一の例であり、多種・多様・複合的な被ばくが生じたが、現実の爆発の正確な状況、原爆放射線の放射の実態等の情報は「限定的・断片的」である。
・放射線の人体影響は、主として疫学的手法によらざるをえないが、放影研の疫学調査は、貴重なものであるが、「超過リスクが現れにくい」ため、リスクが見かけ上低下するおそれが指摘されている。要旨6頁(7),本文287頁
・「急性症状の評価、残留放射線、内部被爆の影響については専門家の見解が別れ・・研究は継続されているが、「将来それが更に進展して解明が進めば、従前疑問とされてきたものが裏付けられる可能性もあり、それが小さいと談ずべき根拠は直ちには見当たらない」要旨6頁(8),本文287頁
等が指摘される。その結果、「原爆放射線が人体に及ぼす影響については・・・全体として、これを過小に評価する結果に傾きがちとなることを容易には否定することができない」とされる(判決287頁、要旨7頁)
(3)起因性判断にあたっては、上記のような「特殊性にも留意しつつ、援護法がその制定の基礎としたところをふまえ、その目的及び趣旨を損なうことのないように、原爆放射線の放射の実態及びその人体への影響につき十全に把握し考慮すべく、経験則に照らして全証拠を十分慎重に総合検討することが必要とされる」として、被爆の程度を論じる際も、疾病の放射線起因性を論じる際も、「それに沿う相応の研究の成果が存在している」場合には全証拠を十全に検討するという姿勢が強調される。事実認定についても、被爆者の供述を、「原爆被害を身をもって体験した者によるいわば第一次的な証拠の一種として」「その重要性」に留意すべきことが述べられている。
(4)このような姿勢は、集団訴訟におけるこれまでの多数の判決に共通するものである。
   2009年5月28日の東京高裁判決も、「科学的知見の通説に対して異説がある場合」について、「通説的知見がどの程度の確かさであるのかを見極め、両説ある場合においては両説あるものとして訴訟手続の前提とせざるを得ない」(205頁)と判示し、ある疾病についてP値が大きいがために有意な増加と言えない場合についても、これをまったく無視すべきではなく、「一定水準にある学問的成果として肯認されたものについてはあるがままの学的状況を科学の到達点(水準)として」法律判断の前提資料として採用することは否定されるべきではない」と判示す少し大きい文字る(同181頁)。そのような場合に、当該疾病を発症させる中間因子ないし背景疾患について放射線との関連がある場合にはそこに着目して起因性を認めるという手法も司法によって確立された法解釈の手法となっている(呼吸器疾患全体と肺気腫,副甲状腺機能亢進症と膵炎,消化器障害と十二指腸潰瘍等)。

Q5 裁判所はどの程度の証拠を見て判断しているのか
集団訴訟は、2003年以来、全国の裁判所で審理が行われ、原告側はもちろんですが、国側も、内外の膨大な専門文献、意見書を提出し、さらには個々の原告の診療録や検査結果資料も取り寄せ、全力をつくして主張・立証を行ってきました。裁判所は、それらを含めた全証拠を文字どおり総合的に検討した結果として、法律判断として、国の却下処分を違法として取り消しているのです。

Q6 敗訴した原告はどのような原告か
比較的遠距離であったり入市の遅い4名が敗訴していますが、そのうち3名は、高齢(認知症等)により尋問ができなかったという事情もあり、距離や入市時期で当然に敗訴したわけではないことに留意いただきたい。
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