《原爆症認定集団訴訟@被爆64年》 の最新情報

広島・長崎に原爆が投下されて60年+α。今、被爆者に癌などさまざまな病気が発症しています。被爆者が「原爆症認定」を求めておこした原爆症認定集団訴訟について、弁護団から最新情報を提供します。

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4/17名古屋地裁 樽井弁護士の弁論

4/17名古屋地裁における更新弁論の内容を掲載します。

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平成15年(行ウ)第20号、平成16年(行ウ)第39号事件
原 告  甲斐 昭 ほか3名
被 告  厚生労働大臣 ほか1名
意見陳述
       2006年4月17日
名古屋地方裁判所民事第9部合議係 御中
原告ら訴訟代理人弁護士  樽井直樹

 本件については、今年夏の結審を目指して証拠調べが積み重なられてきました。このたび、裁判体の構成が大きく変わることになりました、弁論の更新に当たり、改めて原告の意見陳述を行いたいと思います。

 私は、1966年、奈良県の生まれですので、戦争を体験していないことはもちろん、原爆による被害についても何も知らずに過ごしました。私が原爆について知ったのは、小学校高学年のころはやった「はだしのゲン」という漫画を読んだことであり、また広島に修学旅行に行ったことでした。
  
このような経験を通じて、私は、不十分ながらも、原子爆弾による強烈な熱線と風によって一瞬のうちに広島・長崎の町が壊滅し、多くの人命が失われたこと、また原爆放射線被曝により、被爆者が生み出されたことを知りました。そして、多くの日本人と同じように、広島・長崎の悲劇を繰り返してはならないし、そのためには核兵器をこの世からなくすべきであると考えるようになりました。
  しかし、被爆者に関しては、原爆の悲劇の中から幸運にも生き残られた方々という認識しかなく、原爆による被爆が現在も被爆者をむしばみ続けているという認識を欠いていました。
  私は、被爆50周年である1995年に制定された被爆者援護法によって被爆者の問題は基本的に解決したものと思いこんでいたのです。
  もちろん、被爆者は、被爆者の援護について国が全く無策であったと主張しているのではありません。被爆者には、医療費が免除されていますし、健康管理手当の支給を受けている被爆者も多くいます。しかし、国が、被爆者の健康被害を、原爆による被爆によるものであると認める唯一の制度である原爆症認定制度については、被爆者の実情とはかけ離れた認定行政が行われているのです。
  
現在、本件と同様に、厚生労働大臣の原爆症認定申請却下処分の取消を求める訴訟が全国12の裁判所で係属しています。全国で168名もの被爆者が原告として訴訟を闘っているのは、被爆者の実情とかけ離れた認定行政を改めさせるためにほかなりません。
  本件の審理に当たって、裁判官には、今被爆者がどのような状態におかれているのかということに目を向けていただきたいと思います。

2 原爆症認定に関しては、松谷訴訟、小西訴訟という先行訴訟が存在します。
松谷訴訟において最高裁判所は、国が放射線起因性をDS86に基づく被爆線量の推定に基づいてしきい値を越えるかどうかを機械的に判断していることについて厳しい批判を加えました。
松谷訴訟最高裁判決から約4ヶ月後、大阪高裁は、松谷事件最高裁判決を踏まえ、放射線起因性の判断に用いることのできる科学的知見、経験則の不十分さという特質を踏まえて、造血機能障害による白血球減少症について、放射線起因性を肯定しました。
これらの判決は、その後の東訴訟判決とともに、国の原爆症認定行政のあり方について根本的な問題があることを示しているものです。

3 現在、厚生労働省が採用している原爆症認定の方針を私たちは「原因確率論」と呼んでいます。
  この方針は、松谷訴訟最高裁判決によって厚生労働省が認定基準を改めざるを得なくなったことから作られたものと考えられます。しかし、この方針は、一見科学的な装いを取っていますが、最高裁によって機械的適用を強く戒められたDS86に無批判に立脚するばかりか、方法論的に限界のある疫学調査を、疫学の確信的な誤用ともいうべき形で利用したものであり、被爆の実態を正しく反映したものとはいえないものです。
  何よりも、この基準によれば、松谷さん、小西さんと同じ状況にある被爆者について起因性が認められないという倒錯した結果になるのです。
  認定審査に当たって、適正な基準が明確にされることによって、被害者の迅速な救済に資する場合があることは否定できません。しかし、被害の実態から乖離した基準は、被害者の切り捨てという最悪の結果しかもたらさないのです。

4 では、厚生労働省が無視をしている現実とはどのようなものでしょう。私は、2つの点だけを指摘したいと思います。
  1つは、原告甲斐昭のように、原爆投下時に広島、長崎におらず、その後救援活動などのために広島、長崎に入った入市被爆者に多数の急性症状の発生がみられ、多くの死亡例が存在し、生存者にも健康被害が生じているということです。私たちは、入市被爆者にこのような被害が生じている原因として、残留放射能による内部被爆を重視すべきことを主張・立証してきました。入市被爆者に深刻な放射能被爆による健康被害が発生しているという現実は、原爆が投下された後の広島・長崎は、放射能によって危険な状態にあり、そこにいたことのある人々に深刻な健康被害が起こっても不思議ではないことを示しているのです。
  2つ目は、被爆者に生じる健康被害が多種多様であるということです。私たちは、被爆者治療に当たっている臨床医たちの意見書を中心に、「原爆症」を狭くとらえてはならないことを主張立証してきました。特に、原告小路妙子のように、被爆によって体調が全く変わり。様々な病気に襲われているという実態に目を向けなければなりません。東訴訟東京高裁判決が、「被爆後長時間を経過した後に発生した健康被害についても、一応原子爆弾との関係を考えることが相当である」と指摘しているのは、まさにこのことを指しているものと思われます。

5 本日、原告中村・原告森が証言したように、被爆者は、戦後長期間にわたって、体調不良に苦しんできました。被爆者に起こった原因不明の体調不良を、被爆者は「原爆ぶらぶら病」と名付けるようになりました。被爆者は、このような体調不良によって仕事や生活に大きな支障を受けてきました。そして、家族にも理解されないことで心を傷つけられることも多くあったのです。
  被爆者援護法は、このような被爆者を救済するために立法されたものですし、、原爆症認定制度は、被爆者の健康被害を救済するように運用されなければなりません。そのためには、被爆者のおかれた実態に立脚することが必要なのです。
  厚生労働省は、科学的・医学的知見に立脚することと被爆者を救済する必要性があたかも対立するものであるかのように考えているようです。しかし、被爆者救済と被曝に関する科学的・医学的知見が不十分であることと矛盾するものではありません。放射線に関する科学的・医学的知見は今までも発展してきましたし、今後に発展することが見込まれるものです。しかし、被爆者に残された時間は長くはなく、救済の手は生きている被爆者にさしのべなければ意味はないのです。そして、被爆に関する科学的・医学的知見の発展も被爆者に現実に生じている被害に目を向けることによって初めて勝ち取られるものなのです。
  裁判所におかれては、被爆者に生じた健康被害の実態、現実におかれている状態に正面から目を向け、ねじれた原爆症認定行政を改めさせるような判断を下されるように希望するものです。
以上

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